シャンパンとケーキと







シャンパンとケーキと





祝う側に礼儀や作法があるように、祝われる側にも、せねばならないことというものが存在する。少なくとも土方はそう思っている。だがそれにもかかわらず、銀時の態度は、大目に見ても礼儀のれの字も存在しない。親しき仲にも何とやら、とよく言ったものだが、そんなことを口にすれば、そもそも仲良くない、と一刀両断されることだろう。
めんどくさそうに、鼻孔に突っ込んでいた指を出して、寝転んだまま、そのあたりに落ちていた週刊誌だか何だかをべらっとめくる。情事のあとがこんなんじゃ、ムードもくそもない。祝おうという気持ちも興がそがれるというものだ。少なくとも、欲しいものを聞かれたあとの態度ではないだろう。
それからやっと、銀時は土方の問いに答えた。


「ビールは好きだけどさ、パーチーの雰囲気なら、シャンパンのがそれっぽいよね」


よくわからないままに話し続ける声を聞く。


「団子よりは、ケーキだろうし」


団子も好きだけどさ、と言いながらまた雑誌のページをめくる。少し考えるように言葉を止めた銀時に、土方は促すための声を掛ける。


「それで?」
「……あとはお前がいりゃ、完璧かな、と思うんだけど」


どーよ、顔を上げずに言われて、口ごもってしまう。祝われるのに必要なのが、シャンパンとケーキと俺。これは、食べて飲んで消えるものと同列に扱われているわけではないと、いくら土方でもわかる。

「とびっきりのシャンパンとケーキ、用意してやるよ」
「普通のでいいよ。それよか、仕事きちっと終わらせて、風呂上りのきれーな土方がいればいいよ」


破格の言葉に、いったいどっちが祝われているのか。きっと、パーティーの夜はケーキのように甘く、シャンパンのようにきらきらと弾けて暮れていくことだろう。












--------------------------------------------------------------
12.10.07
HGpartyのときのペーパーで配布した、銀さんの誕生日SSでした。
貰っていただいた方ありがとうございました。