ひとつでいい







ひとつでいい





夏祭り盆踊りついでに花火でも上げちまおうぜ、ってまあ盛りだくさんもいいとこだが、うまいものでも盛りすぎるとタダのゲテモノだってことわかってんのかね、と銀時は呟く。そして銀時の隣には、そのゲテモノに当てられた奴が横たわっている。


「普段は犬のエサ食ってても平気な奴がねぇ」


額に張り付いたタオルはもうぬるくなっているだろう。そっと取って、傍らの水に付けてぎゅっと絞る。洗面器の中にいくつも波紋が広がってぶつかって消える。

盛りだくさんの祭りに例のごとく駆り出された真選組は、バカの集まりだけあって皆さん元気に働いてましたが、どうやら自分の体調も管理できないより一層のバカがこいつだったようで、日中の暑さにやられてぶっ倒れた、ところをたまたま通りかかった銀時が近藤に押し付けられて今に至る、ということだ。

みんな手ふさがってるから、依頼だと思って、だなんてまた適当に厄介事押し付けやがって、と土方の額にタオルを押し付けて銀時も隣に寝転んだ。生ぬるい空気を撹拌している扇風機は、今にも職を放棄しそうな頼りなさだ。依頼料はクーラー現物支給でお願いします、だ。

神楽と新八は、お妙と一緒に祭りに出かけている。そのほうが都合もいい。三人で土方の面倒を見る、と言うのも念入りすぎだろう。祭りで近藤に遭遇したお妙が、花火の代わりにゴリラを打ち上げてなければいいが。
そろそろ陽も暮れてきた。花火があがるまでに土方が目を覚ましてくれればいいが。みなが夜空の馬鹿でかい花に見入っている間でもないと、手を繋ぐ隙もないお巡りさんとの恋なんて、まあなんとも笑えないなあ、と銀時は随分顔色の良くなった土方の頬をつついた。












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2013.08.10
夏コミで配布したペーパーのおまけでした。暑かったですね夏コミ…