バースデイアゲイン







バースデイアゲイン





何度目の祝いになるのだろう、と不意に考えた。土方とそういう関係になったのも、昨日今日の話ではない。もう年単位、と考えて思いのほか長いことにぞっとした。だから、何をしてやったらいいのか、なんて言うことに悩んだりするのか、とわかってなんだか肩の力が抜けた。


「もうネタ切れだっつーの」


カウンターに額を押し付けて呟くと、まだ開店前の店の中に以外と大きく響いた。たまとキャサリンが居なくてよかった、と銀時は思う。


「何唸ってんだい」


お登勢が奥から出てきながら、問う。ババアなら教えてもいないのに事情を知っていやがるから、別に聞かれたってかまわないのだけれど、それでも何を言ったのかわからなかったらしいのは、少し安心した。


「なんでもねーよ」


そうかい、とお登勢はめずらしくあっさり引き下がった。そして奥から出して来たらしい、甘味の包みを渡してきた。


「もらい物だけどね、食うだろ」
「おう、悪いな」


駄賃のつもりなのだろう。蛍光灯が一本切れてるから取り替えてくれ、なんてこんなつまらない、いつだってしたやることに、駄賃、なんて。


「手伝うこと、もうねえんだな。じゃ、戻るわ」


 返事も聞かずに戸に向かう。外はまだ明るい。


「銀時」
「んだよ、まだなんかあんのか?」
「何度目だってちゃんと祝ってやんな、わかったかい」


このババアは全く侮れない。さっきの呟きを聞いていたどころか、何のことだかしっかりわかっていやがる上に、自分がそばに居たかった人間の誕生日すら何度も飽きるほど、それこそもうネタ切れだって言いたいぐらい祝ってやりたかったのに祝えなかったことを、こちらが知っているとわかっていてこういうことを言う。


「わかったっつーんだよクソババア、おめーの旦那も、命日じゃなくて誕生日に墓参りしてやれ」
「してるに決まってんだろクソガキ」


ああ本当に侮れない。とりあえず家に戻ったら、すぐに土方に電話して、五月五日の予約を取り付けることにしよう、と思う。













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2013.05.05
スパコミで配布したペーパーに付けてました。ネタ切れってまんま私の心境。